初山別村

夜空の星が綺麗に見える場所は、街明かりから離れた森林や広野が一般的と言われています。
広い駐車場などがあれば、車を停めてじっくりと観察が出来るからでしょう。しかし、意外な盲点として、海沿いの場所も、星の名所になっていたりします。
札幌から北へ約220km、北日本海沿岸の国道232号(通称オロロンライン)を北上すると見えてくる初山別村(しょさんべつむら)も星の良く見えるところです。初山別村は世帯数約600、人口は1360人余りの「日本最北端の村」です。漁業中心の村だった初山別が「星の名所」と気付いたのは、近隣の留萌市で星の観察活動をしているグループでした。視界の半分を
占める海面は、夜になると漆黒の闇となります。小さな村で生活光が少なかったことも星の観察には良好だったのです。

地元の人が考えもしなかった村の長所に気付かされ、村は1989年(平成元年)に口径65cm反射式望遠鏡を持つ「しょさんべつ天文台」をオープンさせます。当時、札幌市青少年科学館の望遠鏡が道内最大でしたが、それを上回る大きさの望遠鏡施設を建設したのです。しかも提案を受けた村長が即断して、わずか半年で建設に着手したというから、小さな自治体ながらその決断の早さ、フットワークの軽さに驚かされます。
一躍「星のむら」となった初山別は、天文教室や一晩中星の観察をするイベントを催すなどして、地元の活性化に大いに貢献しました。現在は、名寄市の「市立天文台きたすばる」が道内最大の望遠鏡(口径160cmで世界最大級)を持つ天文台となりましたが、当時の村長の心意気や、村の高揚感はいかばかりだったかと思わずにいられません。

天文台の建設で、全国から注目が集まった初山別村でしたが、1995年に更にユニークな試みをします。希望者に星に名前をつけて所有してもらう「マイ・スターズ・システム」です。宇宙にある幾多の星には、認識はされていても名前のついていないものが多数あります。その星の1つに好きな名前を登録して、所有できるという村独自の認定制度を創ったのです。
必要経費は5,000円の登録料のみ。申請者には登録した星の概略位置を示した星図とIDプレート、星がタイトルにつく音楽集CDが届きます。IDプレートは天文台のフリーパスとなり、入館した際には自分の星を望遠鏡で覗かせてくれるという特典付きです。

星の所有は初山別村では永遠に登録・保管されます。しかし実のところは所有は非公式扱い、名前も学術的に認定されることはありません。にもかかわらず登録希望者は後を絶たず、現在までに約9200人が登録をしています。遠い彼方にある星の一瞬の煌きに、自分の想いを閉じ込めて、永遠に名を残す。そんなコンセプトにロマンを感じるからでしょうか。
大切な気持ちを星に託して、その星に会いに初山別を訪れる。そんな北海道旅行もステキですね。

●しょさんべつ天文台
住所:〒078-4431 北海道苫前郡初山別村字豊岬153番地の7
TEL・FAX:0164-67-2539
入館料:高校生以上/200円 小・中学生/100円 幼児/無料
http://www.vill.shosanbetsu.lg.jp/shtenmon/index.html